「できるなら赤ちゃんには母乳を飲ませたい」というママは多いですが、母乳だけで育てるのは本当に大変なこと。いつも順調に出てくれるとも限りません。
全国の寺社の中には安産祈願とあわせて「授乳祈願」ができるところがあります。え、神頼み?といわずに、せっかくですからお願いしておけばよい御利益があるかもしれませんよ。
この記事の内容
中部地方
戦国武将の姫君に乳を与えた荒神様 三宝寺荒神堂 〜長野県長野市〜
信州善光寺平の南にある三宝寺は、女身像の荒神様で知られるお寺です。
ご本尊のひとりである子安荒神尊は、戦国時代に合戦を逃れて疎開したものが地域住民の信仰の厚さから当地にとどまったもので、安産と子育てに御利益があります。
この地に荒神様を託したのは当時の坂城城主・村上義清でしたが、正室が難産だった折に祈願したところ姫が無事生まれたうえ、荒神様が女性に身を変えて姫に乳を与えたという伝説もあります。
寺では産後、母乳の出が悪い方のために「乳汁出涌」という祈願をしています。分け隔てなく他人の子へも乳をやったという荒神様の御利益がありそうです。
どこを見ても「おっぱい」のお寺 龍音寺間々観音 〜愛知県小牧市〜
龍音寺や間々観音という名前以上に、地元では「おっぱい寺」で十分通じてしまうという、まさに女性のための、おっぱいのためのお寺。
手水処(ちょうずどころ)、観音様(慈乳観世音という)の石碑、奉納された絵馬、売られているキーホルダーに至るまで、すべてが「おっぱい」に関したものばかり。ここへ来たからには逆におっぱいのことをお願いしなくてどうする、といった風情です。
寺で買える絵馬の他に、自分で作ったおっぱい型の絵馬を奉納する人が多く、そこには授乳祈願だけでなく、美乳祈願、巨乳祈願も含まれているとか。
ある意味安心して恥ずかしくなく、真剣におっぱいのことをお願いできる「聖域」といえそうです。
名鉄バス間々乳観音前から徒歩
近畿地方
親鸞聖人が幼少を過ごした日野のお薬師さん 法界寺 〜京都府京都市伏見区〜
あの親鸞聖人が9歳までを過ごしたというここ法界寺。女性の参拝者には「乳薬師」の別名でも知られます。
本堂には秘仏「薬師如来像」が安置されていますが、実は像の中にもうひとつ「胎内像」といわれる仏様が収められているのだとか。
この胎内像は最澄の作と伝わり、まるで胎児を宿す女性の姿そのものであることから、安産、授乳の御利益を得ようと、古くから参拝者が絶えません。
この本堂に願い事を書いたよだれかけを奉納すれば、元気な赤ちゃんが生まれ、母乳も出るようになる御利益があるそうです。
今では妊婦さんご本人に代わって親御さんの参拝が多いとのこと。これも時代の流れでしょうか。
地下鉄石田駅下車、徒歩約20分
たくさんありますのでお間違いのないように 福田寺 〜京都府京都市下京区〜
寺の名前は「ふくでんじ」と読みます。京都にはこの「ふくでんじ」が他にもあちこちにありますので、まずは寺の場所をご確認のこと。
京都の中心地にあり、京都駅からもほど近い場所にある福田寺は、入口の「乳房地蔵尊」という石碑が目印になります。
鎌倉時代に創建されたお寺で、その前の平安時代は河原院という貴族の邸宅だったそうです。観光というよりは祈願そのものを目的とした方が多く、女性が安心して訪れることのできる雰囲気です。
ここのご本尊は阿弥陀様ですので、本堂の右側に祀られている地蔵菩薩様(乳房菩薩)に祈願をしましょう。授乳祈願のほか、乳房祈願もよい御利益があるようです。
清水五条駅1出口から徒歩約7分
七条駅6出口から徒歩約8分
中国地方
全国的にも珍しい「乳神さま」のお社 軽部神社 〜岡山県総社市〜
今から約700年前に創建された軽部神社は、紀伊熊野から軽部山に3柱の神様を勧請した神社で、地元では「王子の宮」として親しまれています。
この神社と女性との関わりは、その昔神社にあった桜の木に由来します。樹齢400年ともいわれたその桜は「垂乳根(たらちね)の桜」と呼ばれ、この枕詞「たらちね」から「母」への連想となり、さらに庶民の乳神信仰へと発展したのではないかと言われています。
神社拝殿には自作のおっぱい型絵馬が奉納されています。赤ちゃんが母乳をたくさん飲めるようにと願うものや、今度は逆にすんなり断乳できるようにといった切実な願いまでさまざま。
とにかく自分で作って奉納する、というのがミソのようなので、形はともかく思いの伝わる絵馬を奉納してみましょう。
なお神社には参拝者が一言記すノートも置かれています。同じ悩みを持つママたちの気持ちを垣間見ることで、ご自分も励まされるかもしれませんね。
岬から絶景が拝める授乳祈願スポット 阿伏兎観音 〜広島県福山市〜
瀬戸内の海に面した赤の観音堂が美しい阿伏兎(あぶと)観音は、地元の方も授乳祈願に訪れる岬のお寺です。
正式には磐台(ばんだい)寺観音堂といい、もとは航海安全を祈願する場所として毛利輝元が創建したと伝えられます。
観音堂へ行くには裏手の石段から登りますが、お堂までの道のりはスリル満点で、妊婦さん、とくに高所恐怖症気味の方は要注意!お参り前に具合を悪くしないように。
ようやくたどり着いた岬の突端にあるお堂には、これまでに奉納された「おっぱい型」の絵馬があふれ、やっとここが女性のためのお寺だという気分になるはず。ひとつ深呼吸して、落ち着いて絵馬を奉納することにしましょう。
弘法大師が見出した島の高台にそびえる巨石信仰 帯石観音 〜山口県大島郡周防大島町〜
周防大島町にある嵩山の中腹に位置する帯石観音。正確には帯石山普門寺の飛び地境内になります。
かの弘法大師により見出されたという霊石「帯石」には「南無阿弥陀仏」と刻まれ、ちょうど腹帯を巻いたような横筋の跡があることから、安産御利益の観音様として信仰されてきました。
岩田帯持参での安産祈願も受けられますし、また出産後によく乳が出るように願って「乳房型」の絵馬も奉納できます。
寺では季節ごとにツバキ、サクラ、カエデなどが美しく咲き、また澄んだ心でお参りに来られた方には、花がそれ相応に歓迎しているように見えることがあるのだとか。
安産にも眼病にも御利益のある平家ゆかりのおっぱい観音 川崎観音 〜山口県周南市〜
もとは源平合戦で破れた武将・平景清ゆかりの地であり、今から800年以上前に創建された観音堂。一番有名なのは母乳祈願ですが、目を患っていた景清がここの井戸の水で目を洗ったという逸話から、眼病治癒にも御利益があるとされています。
ご本尊の観音様は剛力無双だった景清に戦場でひとつの傷も受けさせなかったというすごい御利益の持ち主で、12年に一度、子(ね)の年にお顔を拝むことができます。
こちらも奉納するのは「手作りのおっぱい絵馬」であり、お堂の裏にはありとあらゆる形をした絵馬がたくさん納められています。
注意として、安産祈願は毎月17日の縁日にしか行われません。またおっぱい絵馬はあまり大きなものは飾れないということなので、B5サイズより小さいものを納めましょう。
九州地方
朱塗りの三重塔が美しい歴史ある千手観音のお寺 清水寺 〜福岡県みやま市〜
寺は最澄によって大同元年(806)に開かれました。シンボルマークである三重塔は江戸時代の建物ですが、その前身だった九輪塔は、なんと長崎丸山にいたある遊女の寄進によって建てられたといいます。
一時は倒壊寸前でしたが、昭和41年に復元再建されました。
境内の乳父(ちちぶ)観音は、最澄の弟子・慈覚大師により祀られたもの。ここへ乳房をかたどったものを奉納すれば、母親の乳の出がよくなると昔から言い伝えられてきました。
また周辺の自然の美しさも見事で、本坊庭園は一見の価値あり。その入口左にある「魔羅(まら)観音」は別名「子授け観音」。ネムノキ製の男性器と女性器がご神体ですので、忘れずにお参りしておきましょう。
不思議な岩の伝説から建てられたおっぱい神社 潮神社 〜熊本県球磨郡湯前町〜
その昔ある池の畔に、大切にすれば水をもたらし、粗末に扱えば怒って日照りを起こす不思議な岩がありました。
村の長老のおばあさんが「岩に女たちの乳を供えれば許される」と教えたものの、水不足で誰も乳が出なかったため、代わりに布で作ったおっぱいを納めたところ、雨が降って水が戻ったという言い伝えがあります。
これが潮神社の始まりです。
今でも白い布で自作のおっぱいを作って納めれば、母乳の出がよくなると伝えられています。
ゴールデンウィーク中には「ゆのまえ潮おっぱい祭り」が開かれ、神社による安産合同祈願式が行われますので、参加してみるのもいいでしょう。
戦国時代のこと。当地のお殿様には子がなく、当神社の「誕生石」という石に願掛けしたところ、見事に子宝に恵まれました。
ところが肝心の奥方が産後の肥立ちが悪く、乳が出ません。やせ細る子を見て困った奥方が神社境内のイチョウの木のこぶをなでたところ、たちどころに乳が出るようになりました。
こぶはまるで乳房のような形をしていたといいます。
神社はいつも人気がないようなので、ゆっくり境内を散策しながら古い物語を回想してみるのもいいでしょう。
南阿蘇は名水の地でもあります。神社のわき水「誕生水」には安産の御利益があるとか。ぜひ口を清めてからお帰りください。
寺社での安産祈願というとかなり大がかりなイメージですが、授乳祈願ができる小さな寺社というのは、他にも全国各地にあります。
また地域によっては「乳がよく出る」伝説由来のスポットなどもありますから、お出かけの際にちょっと寄り道してみるのもいいでしょう。