東京で安産祈願と聞いて真っ先に思いつく寺社といえば、日本橋の「水天宮」ですよね。ところがここはご利益と同じくらい参拝客の混雑ぶりでも超有名。長時間の順番待ちを避けたい妊婦さん泣かせの神様でもあります。でもご安心を。まだまだあります、東京にも穴場の安産祈願どころが!
ここでは普段それほど混雑せず、そのうえ歴史があり、安産のご利益もバッチリ期待できる寺社を都内各所から集めました。
この記事の内容
東京都 23区都心部での安産祈願
徳川家との深い縁をもつ浄土宗の大寺院 増上寺 〜港区芝公園〜
今から600年以上前に開かれた浄土宗七大本山のうちのひとつで、いまや東京を代表する大寺院。徳川家康公が関東の地を治めてからは徳川家の菩提寺に選ばれ、以来6人の歴代将軍がここに眠っています。
俗に「黒本尊」と呼ばれる阿弥陀如来像は、長い間の香煙で黒ずんだものですが、参拝する人々の災難を一身に引き受けられて黒くなったともいわれます。家康公が陣中にて戦勝を祈願したことから「勝ち運を招く」ご利益で知られるほか、寺では安産の祈願もしていただけます。
外国人を中心に観光客は多めですが、祈願の混雑はさほどでもありません。これぞまさに灯台もと暗し、かも。
周辺には境内から見える東京タワー、虎ノ門ヒルズなどの建物や、愛宕神社、浜離宮といった名所があり、ちょっとした散策にもってこいです。
歴代将軍が上覧拝礼した山王祭の社 日枝神社 〜千代田区永田町〜
もとは武蔵野開拓の祖神で、文明年間に太田道灌公が江戸城築城の折、川越山王社を勧請した城内鎮守の社。2代将軍秀忠公による大改造の際に社地が城外に移り、以来町民から総氏神として厚く信仰され、俗に「山王さん」の呼び名で人気がありました。
毎年6月に行われる「山王祭」は江戸三大祭りのひとつに数えられ、3代家光公以来、歴代将軍も上覧拝礼した「天下祭」です。隔年で都心を練り歩く300メートルの大行列「神幸祭」が行われます。
将軍家お世継ぎ出産の折にも安産祈願がされていた神社であることから、そのご利益は実に確か。神社赤坂側には、妊婦さんに優しい登り専用エスカレーターも完備されています。
場所は国会議事堂の近くという都心の真っただ中にありながら、厳かな雰囲気に包まれて参拝できる神社です。
地下鉄(銀座線・南北線)溜池山王駅(出口7)徒歩5分
貴重な自然の中にたたずむ鎮守の社 代々木八幡宮 〜渋谷区代々木〜
このあたりは縄文時代にはすでに人が住んでいた場所で、住居跡などの遺跡もあります。鎌倉時代に主君・源頼家公を暗殺された荒井智明という家来が、名を変え密かにこの地へ隠遁していた折に、夢で八幡大神のご神託を受けたため、小さな祠を建てて鶴岡八幡宮を勧請したのが神社の始まりとされます。
ご祭神は「応神天皇」ですが、その母である神功皇后は数々の勇ましい逸話を持つ古代のスーパーウーマンで、安産子育ての神としても知られています。
神社は渋谷区でも貴重な自然林の残る地域であり、近隣の代々木公園と合わせて都民の憩いの空間となっています。子育て地蔵尊で有名な「田中地蔵」もご近所さん。明治神宮、原宿などにもアクセスしやすく、ときには参拝がてら有名人の顔も拝めるとかなんとか……。
東京メトロ千代田線「代々木公園駅」徒歩5分
東京都 23区東部での安産祈願
下町の天神様は学問だけじゃない 亀戸天神社 〜江東区亀戸〜
江戸正保年間に神のお告げで各地を巡り歩かれた太宰府天満宮の神官さまがここ本所亀戸村にたどり着き、小さな祠にお祀りしたといういわれをもつ神社です。
お祀りする菅原道真公といえば学問の神様ですが、実は子だくさんでも知られ、奥様の宣来子様との間に14人もの子がいたのだとか。
道真公とは幼少からの知り合いで、その後夫と別々に流される苦難の人生を歩みますが、子どもたちに対する愛情はなんら変わることがなく、のちに安産子宝、立身出世の神として敬われるようになりました。
ここ亀戸天神にも奥様と子どもたちを祀った「花園社」というお社があり、大勢の妊婦さんが安産祈願をされます。
神社は東京スカイツリーにも近く、散歩がてらのぞいてみるのも楽しそうですね。
総武線、地下鉄半蔵門線錦糸町駅下車 北口より徒歩15分
東京都 23区西部での安産祈願
広々とした境内が魅力の「東京のヘソ」 大宮八幡宮 〜杉並区大宮〜
1,000年近い歴史を持つ、東京都のズバリ中央に位置する子育ての神社。康平6年(1063)、前九年の乱平定を成し遂げた源頼義公が凱旋の折に、京都・石清水八幡宮を勧請して建てられました。現在の境内の広さは15,000坪ですが、創建当時はもっと広かったため「大宮」という地名の由来となりました。
いわゆるここが「東京のヘソ」だというのは、後の世に地理的に緯度、経度をたどった上で計算されたもの。そこがちょうど大宮八幡宮の近くだった(ヘソ=お産?)というのは、偶然にしては出来すぎの感もありますね。
平日は比較的空いており、駐車スペースもあって、ゆったりした雰囲気で祈願が行われます。近隣には学校、教育施設が多く、参拝後にはのどかに和田堀公園などを散策するのもよさそうです。
東京都 23区北部での安産祈願
美しいお姿の菩薩さまが子どもを守る 鬼子母神堂 〜豊島区雑司ヶ谷〜
「威光山法明寺」が擁するお堂で、名前に「鬼」の字がつきますが、本来は頭に「つの」がつかない「おに」の字をあてられています。それはご本尊の鬼子母神さまが、羽衣を着け、子どもを抱いたとても美しいお姿をしているから。なんと室町時代に今の文京区目白台のあたりで掘り出された像だというから驚きです。お堂が建てられたのはもっと後の天正年間のことになります。
参道のケヤキ並木が美しく、一瞬ここが都会だということを忘れそうなのどかさ。また雑司ヶ谷周辺には「七福神」の神様が点在しますので、各所を探訪してみるのもいいかも。そうそう、大黒天さまは鬼子母神さまの夫神ですよ。
立地は池袋に近く、買い物などアクセスも抜群。最先端の街から歴史ある信仰の舞台へすぐにでもタイムスリップできます。
JR目白駅より 徒歩15分
東京都 都下での安産祈願
地域最古の歴史を誇る安産の神 子安神社 〜八王子市明神町〜
奈良時代に創建されたという古い神社で、時の皇后の安産を祈願すべく、橘右京少輔なる人物によって祀られました。以来庶民には安産の神として敬われ、また江戸時代には徳川家より朱印を受けて神社の紋が「三つ葉葵」となるなど、将軍家からの信仰も厚かったようです。
ご祭神の木花咲耶姫は安産子育ての神ですが、自身も花が咲くように美しい方で、その3番目の御子が神武天皇の祖父・ホオリとなります。
神社は年間を通じて午後は比較的空いており、境内の駐車場スペースも楽々使えるほどですが、春限定のサクラの朱印授与日など、特別な行事のあるときは混雑が予想されます。多摩地域にいながら1,200年の歴史ある祈願を受けられるのはうれしい限りです。
京王八王子駅西口より徒歩1分
武蔵野に根付く安産の神 日枝神社水天宮 〜清瀬市中清戸〜
清瀬にありながら、こちらもれっきとした水天宮さまのお社。社殿は天正年間に造られたようですが、水天宮自体は福岡久留米の本社より勧請されたものとなります。境内にあるひいらぎの木は神社より歴史が古く、日本武尊が木陰で休まれ、この地を「清土(きよど)」とされたという伝説があります。
主祭神で安産の神「大山咋神」が好まれた猿は古くから神の使いであり、日枝神社ではおなじみの存在です。猿は犬と同様に安産の動物として知られ、「魔が去る」としてあやかる信仰もありました。
安産祈願に訪れるなら戌の日と並んで毎月5日のご縁日もいいでしょう。境内に露店などが出店してにぎわうため、風情あるご参拝が楽しめます。
バスあり 3番のりば [清64]台田団地 水天宮前下車
あなたの住む街の近くにも、今まで知らなかった安産祈願の場所があったのではないでしょうか。
かわいい赤ちゃんが無事産まれることを願う安産祈願。大切なのはパパとママの思いそのものであり、祈願の場所ではないはずです。
今回紹介した神社仏閣はどこも格式高い伝統を持ち、霊験あらたかで、しかも混雑はまあまあ程度で済むスポットばかり。気持ちよくご祈願に行ってらっしゃいませ。