安定期に入るとつわりも落ち着き、体調も少し良くなってくる頃です。妊婦生活の思い出に、そして旦那さんと二人きりでの旅行にも出かけてみたい時期ですね。
そこで提案したいのが「世界遺産巡りと安産祈願」を兼ねた小旅行です。神社仏閣は世界遺産に構成されるものが多く、思い出づくりにも最適。ここでは安産祈願が受けられる世界遺産の寺社を7つご紹介します。どこも歴史ある有名な寺社。お腹の中に宿った命とともに訪れる世界遺産。今までとはまた違った楽しみ方ができるかもしれませんね。
この記事の内容
富士山がご神体!まさに富士と駿河を鎮める神 富士山本宮浅間大社 〜静岡県富士宮市宮町〜
世界文化遺産「富士山」を構成する神社はいくつかありますが、なんといっても一番有名なのが本宮。前身は神社北方にある「山宮浅間神社」であり、日本武尊が創建したと伝えられます。
この山宮はご神体が富士山そのものであり、もとは富士山の噴火を鎮める目的があったため、社殿などの建物は一切なく、代わりに富士山を拝む場所が設けられているなどちょっと変わった雰囲気の社。本宮が現在の地に遷座されたのは大同元年(806)のこと、坂上田村麻呂公によるものです。
本宮のご祭神は、安産子安の神として知られる木花之佐久夜毘売命(このはなさくやひめのみこと)であり、またの名を浅間大神(あさまのおおかみ)ともいいます。
たいへんに美しい神様で桜をご神木とするため、神社境内にも500本もの桜が植えられ、春は桜の名所として人気があります。
近くには白糸の滝があり、またちょっと南に足を伸ばせば、つい先頃世界文化遺産に登録されたばかりの「三保の松原」にも行かれます。
霊峰・男体山を崇拝する奥日光の中心地 日光二荒山神社 〜栃木県日光市〜
世界遺産「日光の社寺」に登録される神社のひとつで、その中でもかなり奥地に鎮座しています。この山内(さんない)にあるのが神社の「本社」で、他にも中禅寺湖畔には中宮祠が、男体山山頂には奥宮があります。
二荒山(ふたらさん)は県北西部にそびえる男体山の古い呼び名であり、これと女峯山、太郎山を合わせて「日光三山」と呼ばれます。
神社はこの日光三山をご神体とする社(ご祭神は安産の神・田心姫命)であり、境内はあの華厳の滝などの名所も含まれるほど、広大な面積を誇ります。
日光三山は親子神の関係にあるとされ、男体山には父である大己貴命(おおなむちのみこと)があてられています。
男体山と日光の周辺は奈良時代にはすでに修験場として知られ、その頃山頂に建てられた神を祀る祠が、神社の創建といわれます。が、実際にはもっと古い時代から当地で祭祀が行われていたという説もあり、訪れる人に古代のロマンを感じさせます。
なお当神社で行われる安産特別祈祷は「戌の日限定」「一斉祈祷」ですので、出発前の予約、事前準備は万全に。通常祈願はこの限りではありません。
湯元温泉行きバス 約40分「二荒山神社前」バス停下車 徒歩約1分
実は「輪王寺」というお寺はない? 日光山輪王寺 〜栃木県日光市〜
こちらも日光に位置する有名なお寺かと思ったら、HPには「輪王寺という建物はない」かのように書かれています。
なんだか禅問答のようなこの問いの答えは「輪王寺とは日光山に散らばるお堂、本坊、支院をすべて合わせた総称のことを指すから」が正解。ちなみに滋賀の比叡山もそうなのだとか。
境内は二荒山神社がある山内(さんない)と、さらにいろは坂をのぼった先にある奥日光に分かれています。
山内に参拝するなら総本山の「三仏堂」と徳川家光公を祀った「家光廟大猷院(いえみつびょうたいゆういん)」あたりがよさそうです。そうそう、ご祈願を受ける「大護摩堂(だいごまどう)」は、三仏堂の裏手になりますよ。
もし体調がよければ穴場として奥日光の「温泉寺」の名前も挙げておきます。輪王寺の別院で、もとは偉い方しか入れなかった秘湯ですが、現在はだれでも入浴可能。
源泉が熱いので加水しますが、それでも効能はバッチリとか。体も心もじっくり温めてお帰りくださいね。
弘法大師とその母君ゆかりの院 慈尊院 〜和歌山県伊都郡九度山町〜
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部に登録されている慈尊院は、高野山参詣の要所として知られています。
高野山は「女人高野」ともいわれ、古くから女性の信仰を集めてきました。ここ慈尊院はその表玄関として庶務を司った政所で、高野山までの参道は約21キロ。「高野詣りは慈尊院から始まり慈尊院に終わる」と伝えられています。
弘法大師の母、玉依御前が高齢をおして参られた際に暮らしていた場所であり、亡くなった後に大師自ら弥勒菩薩像とご母公像を安置したことからその別名をとって「慈尊」院と呼ばれます。
以来、母君の化身とされる菩薩の温かさを求め、また子宝と安産を願って「乳房型」絵馬を奉納する女性が後をたちません。弥勒菩薩像は20年に1度開帳されます。
境内にはこれも安産のご利益で知られる、怖くて優しい「鬼子母神」のお社が存在します。ここの鬼子母神さまは左手に子どもを抱き、右手にはざくろを持っているそうです。お帰りの際にちょっと探してみましょう。
「橋本」「妙寺」駅よりアクセスバス臨時運行
二千年以上の歴史を誇る古都の守り神 下鴨神社 〜京都府京都市〜
世界文化遺産「古都京都の文化財」を構成する下鴨神社は、紀元前の昔からすでに当地にあったとされる神社であり、京の都の文化、宗教の中心地として栄えた場所です。
神社の「賀茂祭(葵祭)」が始まったのは欽明天皇5年(544)のこと。奈良時代にはあまりに祭りが盛大で人出が多かったため、わざわざ「しっかり警備するように」というお達しまで出ていたといいますから、京の人々にとって特別な崇拝の存在であったことは確かです。
ご祭神のおひとりである玉依媛命(たまよりひめのみこと)は、鴨川で禊ぎをされていたときに出会った大山咋神と結婚、お子をお産みになったという神話があり、婦道の守護神として縁結び、子育てのご利益で知られています。
下鴨神社の境内は「糺の森(ただすのもり)」と呼ばれ、こちらも縄文時代から変わらぬ姿をとどめる貴重な森です。かつては150万坪にも及んだという広大で深い境内の緑たちにも、目を向けておきたいものです。
四条河原町~京都市営バス4号系統「下鴨神社前」下車
式年造替で一新した社殿と美しき千古の森 春日大社 〜奈良県奈良市〜
世界文化遺産「古都奈良の文化財」を構成する春日大社は、今から約1300年前に国の繁栄と民の幸せを願って造られた神社です。
もとは御蓋(みかさ)山の山頂にタケミカヅチノミコトをお迎えしたものですが、のちに勅命によって現在の地へ社殿が建てられ、その際に経津主命などの神様と合わせて祀られました。
どちらの神様も交渉により国の秩序を守ったという平和的な神であり、天児屋根命、比売神とともに「春日皇大神」と呼ばれます。
春日大社といえば、社殿の朱色が緑に映える美しい立ち姿で知られます。これらは20年に1度行われる式年造替という建て替え儀式によって守られています。
平成28年に完了した第60次式年造替では、一ノ鳥居から本殿、宝庫に至るまで見事に修繕がなされ、神社のいにしえのままの姿を今に垣間見ることができます。
奈良の世界遺産としては、春日大社の神山でもある春日山原始林をはじめ、ほかにも東大寺、興福寺、元興(がんごう)寺などが近くにありますので、足をのばしてみるといいでしょう。
または奈良交通バス(春日大社本殿行)約11~15分「春日大社本殿」下車すぐ
海に浮かぶ寝殿造りは平安建築の最高傑作 厳島神社 〜広島県廿日市市〜
厳島神社は背後の弥山の森林区域を含めて世界遺産に登録されていますが、神社の創建自体はかなり古く、推古元年(593)ともいわれます。
今日参拝客が目にする海上社殿はずっと後の平安時代の建築物で、平清盛の援助を受けながら数年以上の年月をかけて建てられました。
37棟の本宮(内宮)、対岸の19棟の外宮からなる寝殿造りの社殿群は「人類の創造的な才能が生んだ傑作」と称され、その唯一無二の形状はもとより、日本人の美意識を理解する上でも重要な役割を果たしています。
社殿や大鳥居だけでなく、平舞台、高舞台など舞楽や儀式の場となった舞台も見ものですし、潮が満ちると下から海水が上がってくる廻廊(かいろう)では、ちょっとお天気が荒れることを期待してしまう人もいるはず?修復工事が終われば、あらためて先人たちの深い知恵にふれることができるでしょう。
なお神社の建築様式上、足元には隙間がたくさんありますので、参拝時のシューズ類には十分ご注意ください。
宮島桟橋から徒歩15分
世界遺産巡りと安産祈願は思いのほかうまく兼ねることができそうですよね。
家族のよい思い出となるだけでなく、将来産まれてきたお子さんに「すごいところで安産祈願してもらったのよ」と語り聞かせてあげてください。事前の準備を万端にして、楽しく快適な旅を!